専属専任媒介契約とは。一般媒介、専任媒介契約との違いについて解説

不動産を売却する際には、売主と不動産会社との間で結ぶ「媒介契約」が欠かせません。

その中でも最も制約が強い契約形式が 専属専任媒介契約 です。この契約では売主が自分で買主を見つけても直接取引することは認められず、必ず不動産会社を通す必要があります。

本記事では、専属専任媒介契約の定義や他の契約との違い、メリット・デメリット、注意点までを整理し、どのような人に向いている契約なのかを分かりやすく解説します。

目次

専属専任媒介契約とは

まず、専属専任媒介契約の基本的な定義と、他の媒介契約との違いを整理して解説します。

専属専任媒介の定義

専属専任媒介契約とは、売主が1社の不動産会社だけに仲介を依頼する契約形式です。

専任媒介契約と似ていますが、決定的に異なるのは「自己発見取引」が禁止されている点です。

つまり売主自身が知人や親戚に直接買主を見つけても、そのまま契約することはできず、必ず媒介会社を通す必要があります。その分、不動産会社にとっては確実に仲介手数料を得られる可能性が高まり、積極的に販売活動に取り組んでもらえる環境が整いやすいのが特徴です。

一般媒介契約との違い

一般媒介契約は複数の不動産会社に同時に依頼でき、さらに売主自身が買主を見つけて直接取引することも可能です。一方、専属専任媒介契約は「1社限定」かつ「自己発見取引不可」という大きな制約があります。

自由度の面では大きな差がありますが、その分、不動産会社は他社に顧客を奪われる心配がなく、全力で広告や営業活動を行いやすくなります。売主にとっては販促力を一点集中できる反面、業者選びを誤ると売却活動全体が停滞するリスクがある点に注意が必要です。

専任媒介契約との違い

専任媒介契約と専属専任媒介契約は混同されやすいですが、決定的な違いは「自己発見取引の可否」です。専任媒介契約では、売主が自分で買主を見つければ直接契約が可能です。

しかし、専属専任媒介契約ではそれが認められず、必ず媒介会社を通す義務があります。また、両者とも不動産会社に定期的な活動報告義務がありますが、専属専任の方がより頻度の高い報告(週1回程度)が義務付けられているのが一般的です。

スクロールできます
観点一般媒介契約専任媒介契約専任専属媒介契約
契約できる業者数複数業者と契約可能1社のみ1社のみ
売主の自己発見取引可能可能不可
業者の販売努力分散されやすい集中してもらえるより強力に販売活動してもらえる
レインズ登録義務任意7日以内に登録義務5日以内に登録義務
業者からの活動報告義務なし2週間に1回以上1週間に1回以上
契約期間最長3か月最長3か月最長3か月

専属専任媒介契約の売主にとってのメリット

専属専任媒介契約は売主にとって制約が強い契約形式ですが、その分「安心感」と「効率性」という大きなメリットがあります。ここでは、売主が得られる代表的なメリットを解説します。

営業力を集中してもらえる

専属専任媒介契約では、依頼できる不動産会社は一社だけです。そのため、業者にとっては「他社に顧客を取られる心配がない契約」となり、広告や営業に積極的に取り組む強い動機が生まれます。

例えば、不動産ポータルサイトへの上位掲載や現地販売会の実施など、コストをかけた販売活動も行いやすくなります。結果的に、売主はより多くの購入希望者と接点を持てるチャンスが増え、早期売却や好条件での成約につながる可能性が高まります。

定期的な活動報告を受けられる

専属専任媒介契約には、不動産会社に「販売活動の定期報告義務」が課されています。

一般的には週1回程度の報告が義務付けられており、問い合わせ件数や内覧希望者の状況、広告の反響などを共有してもらえます。これにより売主は販売の進捗状況を把握しやすくなり、「今どのような活動が行われているのか」を常に確認できる安心感があります。

情報が不足しやすい一般媒介契約に比べ、売却戦略を見直す判断もしやすくなる点がメリットです。

窓口が一本化されてやりとりがスムーズ

複数の不動産会社に依頼する一般媒介契約では、各社との連絡調整や進捗確認に手間がかかりがちです。専属専任媒介契約では、窓口は一社に限定されるため、やりとりがスムーズになります

問い合わせ対応や内覧調整、価格交渉などのフローも一本化され、売主の負担は大幅に軽減されます。特に「仕事が忙しくて複数業者とやり取りする時間がない」「効率的に進めたい」と考える人にとっては、大きな安心材料となります。

専属専任媒介契約の仲介業者にとってのメリット

専属専任媒介契約は売主にとって安心感のある契約形態ですが、仲介業者側にとっても大きなメリットがあります。ここでは、業者側にとってのメリットを整理します。

手数料を確実に獲得できる可能性が高い

一般媒介契約では「せっかく買主を見つけても、他社が先に契約してしまった」というケースが少なくありません。

専属専任媒介契約では、売主が他社に依頼することも、自己発見取引を行うこともできないため、仲介業者にとっては契約成立時の手数料を得られる可能性が高くなります。

営業戦略を立てやすい

専属専任媒介契約では、他社との競合がないため業者は安定的に販売計画を立てることができます。

例えば、どの広告媒体を重点的に使うか、どのタイミングで価格戦略を変更するかといった、中長期的な営業戦略を安心して設計できます。一般媒介契約のように「他社に先を越されるかもしれない」というリスクがないため、腰を据えて丁寧に売却活動を行えるのが特徴です。

資源を集中投下できる

専属専任媒介契約は業者にとって「自社で必ず成約まで進められる可能性が高い契約」です。

そのため、人的リソースや広告予算を他の案件以上に集中的に投入できます。具体的には、不動産ポータルサイトでの目立つ掲載枠の確保、現地販売会やチラシ配布への投資など、コストをかけた施策を実行しやすくなります。

専属専任媒介契約のデメリット

専属専任媒介契約は、不動産会社に営業力を集中してもらえる点で大きなメリットがありますが、売主にとっては制約も少なくありません。

ここでは、専属専任契約のデメリットについても解説します。

自己発見取引ができない

専属専任媒介契約では、売主自身が買主を見つけても直接契約を結ぶことはできません。

必ず媒介会社を通して契約する必要があるため、仲介手数料を節約できる機会が失われます。例えば、親族や知人が購入を希望していても、媒介業者を介する必要があり、その分コストが増えることになります。

自由度が大きい一般媒介契約や専任媒介契約と比較すると、売主にとっては大きな制約と感じやすい部分です。

販売戦略が限定される

専属専任媒介契約では、販売活動の主導権が不動産会社に一任されるため、戦略が限定されやすい傾向にあります。

複数社に依頼できる一般媒介契約であれば、異なる業者が独自の広告手法や販売ルートを使い、幅広いアプローチが可能です。一方で、専属専任では、1社の方針に依存することになり、担当者の力量や会社の方針次第で販路が偏ってしまう恐れがあります。

結果として、思ったように買主候補へアプローチできないケースも出てきます。

業者のペースに左右されやすい

専属専任媒介契約は売主が他社に依頼できず、窓口が1社に限定されます。

そのため、業者の活動ペースや方針に強く左右されるリスクがあります。例えば、広告出稿や内覧の調整が遅れても、他社に切り替えて進めることはできません。

売主としては定期報告を受け取れるメリットがある一方で、「思うように進んでいない」と感じても即座に別ルートで改善できない点がデメリットとなります。

専属専任媒介契約を結ぶ前に確認すべきポイント

専属専任媒介契約は、売主にとって効率的で安心感のある契約ですが、同時に大きな制約も伴います。そのため契約を結ぶ前に、不動産会社の信頼性や販売戦略、契約条件を十分に確認しておくことが重要です。

不動産会社と担当者の信頼性を確認する

専属専任媒介契約では一社に販売を任せるため、会社と担当者の信頼性が極めて重要です。

大手だから安心というわけではなく、担当者の経験や実績、誠実な対応が売却の成否を左右します。口コミや紹介を参考にしたり、面談時に過去の販売実績を具体的に確認すると安心です。

広告・販売活動の内容を確認する

同じ専属専任媒介契約でも、不動産会社によって広告活動の中身は大きく異なります。ポータルサイトへの掲載、紙媒体での宣伝、現地販売会の実施など、どの手法を使い、どのくらいの頻度で行うのかを確認することが大切です。

事前に活動内容を明示してもらうことで、契約後に「思ったより広告が少ない」といった不満を防ぐことができます。

契約期間と解除条件を確認する

専属専任媒介契約の契約期間は最長3か月と法律で定められていますが、実際には更新を前提に進められるケースが多いです。契約時には、更新の有無や解除条件を必ず確認しておきましょう。

例えば「契約途中で解約できるのか」「どのような手続きが必要か」といった点を事前に明確にしておくことで、万一担当者と相性が合わない場合や販売が停滞している場合でも、柔軟に対応できます。

報告義務と手数料を理解する

専属専任媒介契約には定期報告義務があるため、どのような形式で、どの頻度で報告を受けられるのかを確認することが大切です。例えば「週1回の進捗報告をメールで受け取る」といった取り決めが一般的です。

また、仲介手数料は成功報酬として契約成立時に発生しますが、上限額や支払いタイミングを理解しておかないとトラブルの原因になります。費用面と情報共有の仕組みを事前に把握することで、安心して売却活動を進められるでしょう。

専属専任媒介契約が向いている人

専属専任媒介契約は、売主にとって自由度が制限される一方で、不動産会社のサポートを最大限受けられる契約形態です。ここでは特に、どのようなタイプの売主がこの契約に向いているのかについて解説します。

複数業者とのやり取りを避けたい人

複数の不動産会社に依頼できる一般媒介契約では、それぞれの会社とのやり取りが発生し、進捗確認や調整に時間と手間がかかります。

一方、専属専任媒介契約は窓口が一社に限定されるため、連絡・調整が非常にシンプルです。

「仕事が忙しくて複数業者と連絡を取る余裕がない」「効率的に売却を進めたい」と考える人にとっては、大きなメリットになります。売却活動の負担を軽減し、安心して任せたい人に適した契約です。

売却活動の進捗を把握したい人

専属専任媒介契約では、不動産会社に定期的な活動報告義務があります。多くの場合、週1回の頻度で問い合わせ件数や内覧状況、広告の反響などを共有してもらえます。

これにより売主は「売却活動がどの段階にあるのか」を明確に把握でき、不安を抱えにくくなります。進捗が見えることで売却戦略を修正しやすく、次の一手を判断する材料にもなります。「販売状況をしっかり把握したい」という人に特に適した契約といえるでしょう。

自分で買主を探す予定がない人

「知人や親族に声をかけてみたい」「SNSを使って自分で買主を探す」といった行動を予定していない人にとっては、専属専任媒介契約が向いています。

自己発見取引が禁止されているため、自分で買主を見つけたい人には不向きですが、逆に「業者に全て任せたい」というスタンスの人にとっては安心できる契約形態です。

仲介業者は成果がほぼ確実に得られる契約であるため、積極的に動いてもらいやすく、売主も効率的に売却を進められます。

専属専任媒介契約に関する良くある質問

専属専任媒介契約は制約が強い分、売主から寄せられる疑問や不安も多い契約形態です。

ここでは契約期間や解除条件、仲介手数料の扱いなど、特によくある質問を整理しました。

豊川

事前に疑問を解消しておくことで、安心して契約を結び、スムーズに売却活動を進めることができます。

専属専任媒介契約の契約期間はどのくらいですか?

法律上、契約期間は「最長3か月」と定められています。契約終了後は再契約や別会社への依頼も可能です。多くの場合、売却完了まで3か月ごとに更新しながら進めます。短期で見直せるため、業者の対応に不満があれば契約更新を見送ることも可能です。

契約途中で解除できますか?

専属専任媒介契約は拘束力が強い契約ですが、売主側からの中途解約も可能です。ただし、解約方法や通知の有無は契約内容によって異なるため、事前に確認が必要です。解約条件をあいまいにしたまま契約するとトラブルの元になるため、書面で確認しておくことをおすすめします。

仲介手数料はどのように発生しますか?

仲介手数料は「売買契約が成立したとき」にのみ発生します。売主と買主が契約書に署名・押印し、条件が確定した段階で支払い義務が発生するのが一般的です。専属専任媒介契約では必ず業者を通して契約する必要があるため、ほぼ確実に仲介手数料を支払う形になります。

一般媒介契約や専任媒介契約との違いは?

一般媒介契約は複数社に依頼でき、自己発見取引も可能です。専任媒介契約は一社限定ですが、売主が自力で買主を見つければ直接契約ができます。専属専任媒介契約はその中でも最も制約が強く、「一社限定」かつ「自己発見取引不可」という特徴があります。その分、不動産会社に営業を集中してもらいやすいのが違いです。

活動報告はどのくらいの頻度で受けられますか?

専属専任媒介契約では、法律で「1週間に1回以上」の報告が義務付けられています。電話やメール、書面など形式は会社によって異なりますが、問い合わせ状況や内覧結果などを定期的に知ることができます。進捗を把握できるため、不安を感じやすい売主にとって大きな安心材料となります。

契約更新は自動的に行われますか?

契約期間は3か月が上限ですが、多くの不動産会社では期間終了時に売主の意思を確認し、合意があれば再契約という流れになります。自動更新ではなく、都度確認が必要なケースが一般的です。業者との相性や活動状況を見て「継続するか」「他社に切り替えるか」を判断できます。

まとめ

専属専任媒介契約は「売主の自由度が制限される代わりに、不動産会社の営業力を最大限活用できる契約形態」です。

複数社とのやり取りを避けたい人や、自分で買主を探す予定がない人に向いており、効率的かつ安心感のある売却活動を進められる点が大きな魅力です。

一方で、自己発見取引ができない・業者依存度が高いといったデメリットもあるため、契約前に会社や担当者の信頼性を十分に確認することが不可欠です。

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